ヒカゲノコト

読んだ本、見た映画、ドラマのことをつらつらと書いていきます。

映画ノコト 「グレイテスト・ショーマン」

割れんばかりの歓声と、むせ返るような熱気、目が眩むような色とりどりのショー。

皆さん、サーカスはお好きですか?

 

 

子供の頃、両親と妹とサーカスを見に行ったことがあります。普段は車なのに、珍しく電車で遠くへ出かける。それだけでわくわくしていました。

着いた場所には大きなテントと沢山の人。人生初めてのサーカスを目にした私の頭の中で流れるのは大きな耳の子像が大冒険する映画。

座った席はなんと最前列。目の前でショーを見ることができます。

ここまでくると楽しい思い出なんですが……

実際はそんなに楽しめませんでした(笑)

何せ当時小学一年生。音は大きい、薄暗い、白塗りの人がいっぱいいる、ライオンが目の前に来たときは大号泣してしまいました。

大人になった今なら楽しめそうなので、機会があったら見に行きたいなと思います(笑)。

 

今回の映画はサーカスのお話です。

 

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グレイテスト・ショーマン」(2017年)アメリカ映画

グレイテスト・ショーマン」『THE GREATEST SHOWMAN』

監督:マイケル・グレイシー

脚本:ジェニー・ビックス

   ビル・コンドン

原案:ジェニー・ビックス

出演者:ヒュー・ジャックマン

    ザック・エフロン

    ミシェル・ウィリアムズ

    レベッカ・ファーガソン

    ゼンデイヤ

公開:アメリカ 2017年

   日本 2018年

 

ラ・ラ・ランド」で歌曲賞を受賞したコンビが音楽を手掛けているだけあって、非常にエンターテイメント性の高い作品でした。

冒頭のヒュー・ジャックマンの歌い出しには全身鳥肌が立ちました!

常日頃から邦画よりハリウッド映画を激推ししているんですが、やっぱりハリウッドはすごいですね!レベッカ・ファーガソン以外のほとんどのキャストが演技力に加え、歌も踊りもこなしていて素晴らしかったです!特にアニー役のゼンデイヤは演技力も高く、しかもスタントもなし。サーカスメンバーで踊るシーンが多々あるのですが、思わず彼女を目で追ってしまいました。

 

鑑賞した感想としては「最高!何度でも見たい!」と思うのですが、ストーリー性はあまり無いです。展開も読みやすく、内容も使い古された感じは否めないのですが、エンターテイメント性の高さと溢れ出る正のエネルギーがそれを払拭しています。

この映画、アメリカの批評家の間では中々の酷評なんですが、主人公のP・T・バーナムについて調べるとそれも納得できます。

溢れ出る正のエネルギーと言いましたが、正しく言うとディズニー映画並みに負の部分をそぎ落としたストーリーです。

純粋に楽しみたい人は、

P・T・バーナムについて決して深く掘り下げないことをお勧めします!

 

 

※ここから先はネタバレありの感想になります。

 

 

 

 

 

 

貧しいバーナム少年は純粋で大きな夢を胸に抱いていました。チャリティーもそんな彼に心惹かれ、大人になった二人は半ば駆け落ちのような形で結婚し、二人の娘を授かります。

バーナムがチャリティーを迎えに行った時、出迎えたチャリティーの父は「娘は貧乏暮らしに耐えられずにすぐ帰ってくる」と冷たく予言してみせます。バーナムは「この家のような立派な家に住み、裕福に暮らしてみせる」と宣言します。

後にチャリティーは娘を連れ、家に帰ってしまうのですが、それは野望に駆られたバーナムに愛想をつかしたからです。

バーナムの純粋な夢が、野望に変ってしまったのは、養父とのこの会話にあるのでしょう。サーカスが成功したバーナムは、チャリティーの生家の近くの屋敷を買い、ミス・リンドの舞台の成功を祝うパーティーで養父と揉め、更なる成功を求めて全財産を投げうってしまいます。

チャリティーと目が合うだけで殴られた子供時代、二人の幸せを祝福せず、決してバーナムを認めない養父。これが呪縛となり、バーナムの夢を野望へと変えてしまったのではないかと思います。

 

いや、でも父親からしたら大事な娘が貧乏人の下へ嫁いだら心配すぎて許せないでしょう。時代も時代ですしね。娘が帰ってきた時にはしっかり面倒を見ているようだし、特別高圧的な父親じゃなくて、この時代では娘思いなだけの父親なんじゃないかと思うんですよね。

それにしてもチャリティーは凄い!上流階級のお嬢様として育ったのに、貧乏なことに文句も言わず、一生懸命家計をやり繰りしてバーナムを支え、最後にはバーナムを許す心の広さ……。女性の鑑のようだな、と思いました。

 

 

サーカス団員たちの強さも素晴らしいです。

親にさえ存在を隠され、ただ生きているというだけで後ろ指差され、傷つけられてきた彼ら。バーナムの誘いに希望を感じながら最初は人前に立つことを躊躇します。ショーをこなすうちに自信をつけてきた彼らの心を挫いたのはバーナム自身です。上流階級への野望に憑りつかれた彼は、上流階級向きではない彼らを拒絶してしまいます。

それを糧に、ありのままの自分で生き抜こう、戦い抜こう、と彼らは奮い立ちます。

最後には、全てを失ったバーナムを励まし、再び共に立ち上がります。

 

小人症、髭女、アルビノ、巨人症、結合双生児、入れ墨男、有色人種。

彼らの見た目は様々です。現実では見世物小屋で人としての扱いを受けられなかったり、いるだけで笑いものにされていたフリークスと呼ばれる彼らはこの映画の中では酷く生き生きと輝いています。負の要素が完全に削ぎ落された演出になっていますね。

ところで、髭女ってかなりポピュラーなフリークスらしいのですが、単に髭を剃って誤魔化すのではだめだったのですかね?レディ・ルッツは出番もセリフも多い主要キャラクターなのですが、なんだか彼女だけ設定が薄いように感じてしまいました。男なのに声が高いとか、トランジェスターなのかな、と思っていたので、「ん?髭が生えてるだけ??」となってしまいました。

 

 

恐らく女性ならほとんどの方が注目するのがフィリップとアニーの恋愛だと思います。

上流階級で生まれ育ち、上流階級向けの劇作家であることに退屈さを感じていたフィリップ。魅惑的なボーデンの口車に乗せられ、サーカスの演出家を引き受けた彼は有色人種のアニーに一目惚れします。最初こそアニーは相手にしませんが、少しづつ彼に惹かれていきます。一度は手を取り合う二人ですが、両親の視線に耐えられなくなったフィリップが手を振りほどいてしまいます。それでもアニーへの思いを断ち切れなかったフィリップは、彼女を演劇に招待しますが、そこでも両親と遭遇してしまい、両親の心無い言葉にアニーは走り去ってしまいます。フィリップは両親に「自分の生き方は自分で決める」と告げ、彼女を追いかけます。けれど、アニーは結ばれる運命ではないと彼を拒絶します。

反対派との争いで火事が起きた時、アニーの姿が見えないと燃え盛る建物にフィリップは飛び込みます。アニーは裏口から無事逃げ出していたのですが、フィリップは意識不明の状態で救出されます。アニーは必死でフィリップに付き添い、彼が目覚めた時には周りの目を気にすることなくキスを交わします。

 

もう、とにかく、ザック・エフロンがかっこいい!え、この子ハイスクール・ミュージカルの子なの?という感じ。アップヘアーがとてつもなく似合いますね。

恋愛展開としては在りがちなものなんですが、途中二人の空中ショー、「リライト・ザ・スター」が本当に素敵なんです!

グレイテスト・ショーマンのミュージカルシーンは全てが素敵なんですが、フィリップとアニーのものが一番好きです。

二人で宙を舞いながら愛の歌を歌う。とても現像的です。

 

 

欲望に駆られ、全てを失くしたバーナムはサーカス団員の励ましと、フィリップの助力でサーカスを再建します。ショーの最中、彼は出番をフィリップに譲り、娘のバレエの発表会に駆け付けます。

自らのためでは無く家族のためにあることを決意した、という描写でしょう。

 

長々と書きましたが最後に残るのはバーナムへの思いより彼を取り巻く人々への思いだと思います。途中で何度も「何やってんだよー」と呆れてしまいました。バーナムがヒュー・ジャックマンじゃなかったら嫌いになっていた気さえします…(笑)

バーナムは好きになれなさそうだけど、映画自体はとても好きになりました!もう一度劇場で見ておきたいし、DVD化されたら絶対に買いたいですね!