映画ノコト 「プレステージ」
皆さんマジックは好きですか?
私は熱中するほどでは無いですが、見るのは好きです。
昔は、マジックを見る度に「すごい!なんでなんで」と純粋に楽しんでいたのですが、いつからか、「どうせトリックがあるんだろうな」という目で見るようになってしまいました。マジックの内容よりも、トリックの方が気になるのはなんだかひねくれている様な気がしてしまいますね。
今日は、そんなマジックを題材にした映画です。
――130分、目を凝らせ
全てのシーンに
罠がある――
「プレステージ」『The Prestige』
監督:クリストファー・ノーラン
脚本:ジョナサン・ノーラン
『奇術師』
出演者:ヒュー・ジャックマン
公開:アメリカ 2006年
日本 2007年
―あらすじ
19世紀末のロンドン。ボーデンはライバルであるアンジャーの瞬間移動マジックを調べるため、彼のマジックの最中に舞台下に侵入する。するとアンジャーはボーデンの目の前で、2人にとっていわくつきの水槽に落ちて溺死。そばにいたボーデンはアンジャー殺害の容疑で逮捕される。
遡ること数年前。若きアンジャーとボーデンは、ある奇術師の下で互いに修行していた。ある時、助手であったアンジャーの妻が水中脱出マジックに失敗し溺死する。その原因はボーデンが結んだロープであった。2人は決裂し、アンジャーは復讐のためにボーデンの手品を失敗させ、ボーデンは左手の第4・第5指を失う。以後、2人は互いの邪魔をしながら激しく競い合うようになる。
(Wikipediaより)
実はこの映画、レンタル開始された頃に一度見たことがあるんです。まだ純粋無垢な小学生の頃だったので、大筋と結末しか覚えていなかったんですけど、見直して良かった!と思いますね。
小学生の頃には分からなかった伏線にゾッとしましたね。
最後に伏線が回収されて「ああ!なるほど!」となります。
先ほども書きましたが、ほんとに全てのシーンに罠があります!
マジック。それは大人も子供も楽しめる娯楽です。
けれどこの映画は、そんな楽しさや明るさはありません。幸せなシーンはいくつかあるのですが、裏には常に野望だとか悲しみ、怒りが渦巻いています。
物語はボーデンの裁判から始まります。有罪判決が下され、処刑までの短い時間を牢獄で過ごすボーデン。そんな彼を、一人の紳士が尋ねてきます。コールドロウ卿という人物が、ボーデンの人間瞬間移動のマジックのタネと引き換えに、彼の娘の今後を約束する、という提案と共にアンジャーの日記を残していきます。
アンジャーの日記は、かつて彼が手に入れたボーデンのノートを解読する時に書かれたものでした。
この映画は、三つの時間軸を転々とするので、最初は少し混乱するかもしれません。
アンジャーが死に、ボーデンが牢獄で過ごす時間。
ボーデンのノートを手にしたアンジャーがコロラドで過ごす時間。
ボーデンのノートに書かれた、二人が決別することになった事件からアンジャーがボーデンのノートを手にするまでの時間。
この三つの時間を転々としながら、最後にアンジャーの死んだ後の時間が動き始めます。
最初にも書きましたが、とても悲しい物語です。
アンジャーは天才エンターテイナー、ボーデンは天才トリックメーカー。二人が組めば最高のマジシャンとして名を馳せた筈でしょう。アンジャーの妻が死ぬ事件が起きなければ、とも思いますが、アンジャーもボーデンも独立して名を上げるつもりだったので、最初からライバルになることは必須だったのでしょう。けれど、事件さえなければそのライバル関係も良いものになっていたのでは、と思います。
そう思ってしまうほど、彼らの戦いは悲しく辛いものです。ボーデンが幸せになることを許せず、彼から全てを奪おうとするアンジャー。ボーデンはマジシャンとして名を上げるために邪魔なアンジャーを排除しようとします。
マジックのため、ボーデンへの復讐のため、愛情も友情も利用して最後には心まで犠牲にしたアンジャー。
マジックのためだけに人生の全てを犠牲にするボーデン。
小学生の頃の私は、悪いマジシャンのボーデンと戦うアンジャーの話だと思っていました。けれど、改めて見るとこの物語には善も悪もありません。二人とも自らの信念のために生きただけだと思えるのです。
この映画のジャンルはSFです。途中で急なSF要素があるので、苦手な人はえ?となるかもしれませんが、最後にはきっちりと収まるので安心してください。
この記事を書くにあたって、ネタバレを書くかどうか悩んだのですが、書かないことにします。是非ネタバレ無しで見ていただきたい映画です。